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あるお母さんの応援メール(その2)
H・S君のお母さん

A様

メールをありがとうございました。
お返事がすっかり遅くなってしまいました。
ごめんなさい。

この一週間、金沢へ行ったり、そのほかいろいろの用事が重なって
超ハードスケジュールでした。
やっと今日、落ち着いた生活に戻りました。

さて、本題です。
Aさんのご質問のお答えになるかどうか判らないのですが、
最初に、Sの二歳頃の課題(勉強)を三つお話してみます。

1番目に、ジェスチャーについてです。

わたしも、Sが二歳くらいの頃、
ジェスチャーの表出が増えて欲しいと願っていました。

だから、生活の中で沢山ジェスチャー(手話)で話しかけるようにしていました。(それは、多分、わたしでもAさんでも同じだと思います。)

普通の母親が、幼児に話しかけるようなことは、ジェスチャーで表現できるようになりたい。絵本を、ジェスチャーで読み聞かせしたいと、思いました。

実際に、1歳10ヶ月頃から、ジェスチャーで読み聞かせをするようにと、御指導を受けました。

2番目に、文についてです。

能登谷先生の御指導に従って、
以前お話しした、文字入りアルバムの、文字の部分を、寝る前に読み聞かせました。

「兎が人参を食べます。」
「Sちゃんが馬に乗っています。」
「Sちゃんが遊んでいます。」
のように、写真一枚につき、二語文から三語文の、短い文です。

最初は遊びに行ったときの写真のアルバムでしたが、Sが、自分からアルバムを開くようになると、日常生活も、アルバムにするようになりました。

また、3~4歳になると、教えたい言葉をいろいろ盛り込んで、長い文のついた、アルバムも作りました。

5歳になった今でも、アルバムは大好きで、一人で開いて読んでいます。
ジェスチャーで読み聞かせするために、わたし自身も、手話を覚えました。

絵本も使いました。
ひらがなで書かれたものは判りにくいので、ひらがなを漢字に直したり、
説明を書き込んだりしました。

漢字に直した部分は、ジェスチャーで説明できるように、本で調べたり、能登谷先生に教えていただいたりしました。

3番目に、文と絵のマッチングについてです。
能登谷先生から、1歳11ヶ月頃、絵と文のマッチングをするように
ご指導を受けました。

それで、表が文、裏が写真と文の「写真つき文カード」を作って、何度も、わたしが、ジェスチャーで読んで見せました。

写真は、最初のうちは、遊びに行ったときに撮ったものなど、Sが喜びそうなものを使いました。

文は「砂場で遊ぶ。」「橋を渡る」「包丁で切る。」などです。

そして、次第に、日常生活も写真にとって使うようになりました。

「お姉ちゃんが泣く」「お風呂に入る」「お父さんが寝ています。」 というようなカードを作りました。




先生から、始めにジェスチャーで見せながら聞かせた後、絵と文のマッチングをするよう、ご指導を受けていましたが、わたしは、それぞれの単語がわかっていれば、そのうち、Sは、文のとおり、ジェスチャーしてくれるようになると、かってに思い込んでいました。

そこで、毎日、10枚くらいの「写真つき文カード」を、何度も、何度もジェスチャーで読んで見せました。

でも、Sは、文を見て、文の通りジェスチャーしてくれるようにはなりませんでした。

4ヶ月ぐらい、毎日、読んで見せるのを続けたある日、たまたま、絵と文を切り離してみたら、Sは「大事なカードが壊れた。大変だ。」と思って、「壊れた。壊れた。」と、ジェスチャーしながら、文を写真の横に、持っていきました。これが、結果的に、マッチングができたことになりました。

その時以来、絵付き文字カードの文を、何度も読んでから切り離すと、Sは、パズルをするような感覚で、絵に文字を持っていくのを楽しむようになりました

Sが楽しんでくれたので、マッチングのための、写真付き絵カードは、
全部で80枚くらい作りました。

ジェスチャーで読み聞かせをするように、御指導を受けたのは、1歳10ヶ月の時。
文のカードを作るようにご指導を受けたのは、1歳11ヶ月の時。
そして、Sがジェスチャーで二語文を表現したのは、2歳になってから。

はっきり証明することはできませんが、楽しかったときの写真と文字も見ながら、ジェスチャーで話しかけたり、写真と文のカードを使って、マッチングパズル遊びをしたことが、Sの二語文のジェスチャーの表出を早めたような気がします。

つまり、Sの場合には、絵(写真)と文字とジェスチャーを、
同時に使っていたことが、相乗効果を生んで、理解を早めたように思えるのです。

Yちゃんの学習が、絵カード中心に進めてこられたのなら、
カードを見る習慣はできています。

カードを見るときにジェスチャーをつけたり、文字を書き込んだり、と、いうのは、どうでしょう。

きっとうまくいくような気がします。

聴覚読話と自発語に関しては、Sもとことん苦手でした。

Sはわざと、ママの口元を見ないために、頭を上げない、なんていうことも、しました。

どうなることかと、ひやひやしましたが、人工内耳の手術をしてから、音や口話に興味を持つようになりました。

文字でもジェスチャーでも聴覚読話でも、本人が興味を持って、初めて、ぐんぐん伸びるようです。

今は、Yちゃんは、2歳前だから、まだ、裸耳の正確な聴力検査は無理でしょう。

もし、聴力が厳しいとしたら、耳を使う聴覚読話と自発語は、判りにくく、
視覚言語の文字や、ジェスチャーはわかりやすいでしょう。

話しかけなどの、刺激だけは続けて、ジェスチャーか文字の、視覚的にわかりやすい部分を大切にして、沢山のばしてあげては、いかがですか。

2歳代後半から3歳頃、裸耳の聴力検査ができるようになります。

万一、聴力が厳しくて、3歳前後で、人工内耳の手術を考えられるようでしたら、それまでに、文字かジェスチャーでコミュニケーションがとれるようになることが、とても大切になります。

Yちゃんは、3歳まで約1年ですね。

最後に、子供のジェスチャーを増やしたいと思ったら、まず、親のジェスチャーの話しかけを、増やしたくなります。

そこで、ジェスチャーをどう表現しているか。についてです。

おすすめは、トライアングルから出版されている「幼児手話辞典」です。
これは、幼児の身の回りの言葉が、沢山載っています。

これを手元に置いて、いつも、「幼児手話辞典」で言葉を調べて、
わたし自身、手話を覚えながら、ジェスチャーで、話しかけていました。

覚えやすい手話を知ると、極力それを利用しました。

「リンゴ」は、ぽっぺたを指のまるで叩く。(リンゴほっぺ)
「じゃがいも」は、にきびをイメージして、顔中を指のまるで叩く。(じゃがいもの芽の出るところは、へこんでいるので)
「ごぼう」は、右手親指を左手で握って、左右の手を横に伸ばす。(指文字の、数字の5(ご)から。)
「バッファロー」は「馬」「牛」と表現するといいそうです。(「牛の体で、馬のように群れになって移動する。」イメージぴったり。)

本に載っていない言葉のジェスチャーは、自分でつくっていました。
「日本語とジェスチャーが対応していて、話が通じるサインなら、何でも、良し」です。
(正確な手話でなくても、家族内で通じるジェスチャーを、「ホームサイン」というと、後で知りました。)

例えば、指文字で頭文字1字を表現した後、その大きさと形を表す。という方法だと、かなりいろいろ表現できます。

手話では、「白菜」も「キャベツ」も「レタス」も区別がないので、

「白菜」は、指文字の「は」+キャベツの形
「レタス」は、指文字の「れ」+キャベツの形
これだと、Sも、キャベツと関連づけて覚えることが出来ます。

パンにも一つ一つ種類があって、それぞれ名前がある。

「マフィン」は指文字の「マ」と「パン」
「テーブルロール」は指文字の「て」と「パン」
Sの指文字は、正確でなくても、「指がでてる。」とか、「手が開いている。」でOK。

調味料もそれぞれ勝手に名前を考えて、

「マヨネーズ」は、「白」「絞り出す」
「ケチャップ」は、「赤」「絞り出す」
「塩」は、指文字の「し」と「ぱっぱっと、かける」
「砂糖」は、「甘い」「ぱらぱら」
「ヨーグルト」は、「よ」「ー」「ぐ」と指文字で表現すると、手のひらが「パー・グー・パー」となるので、「パー・グー・パー」は「ヨーグルト」

後は、駄洒落でも何でも、最大限に利用する。

「ホットドッグ」は、「熱い」+「犬」
「お好み焼き」は、「好き」+「手のひらを返して、裏表焼く」
これは親にとって覚えやすいのはもちろんですが、案外、Sにとって覚えやすい様でした。

ジェスチャー無しで覚えた文字も、あります。
でも、可能な限り、ジェスチャーがある方が「文字」も教えやすく、会話もしやすいように思いました。

幼児手話辞典を手元に置いて、Aさんのホームサインを作ってみられてはいかがですか。

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